2020年8月4日

投資の四季(2020年8月)

令和2年は過半が過ぎました。早半年ともいえましょうが、未曾有の市場変動が国際金融市場にもたらされた半年でもあったため、ファンドマネージャーを職務としている私としては、まだ半年なのかという面持ちです。

 

さて、本題の結論から申し上げますと、今後の国際金融市場動向を鑑みた時、投資の四季でいえば、「冬入り」(市場にとっての赤信号)となったと判断しています。事由詳細は以下の通り。

 

ちょうど一年前に「秋入り」(市場にとっての黄色信号)した、とこのコラムでもお伝えしており、実際はその後は、景気後退に向けて国際金融市場は大幅に調整をしていました。

 

「秋入り」から1年が経過した現在、大規模な金融財政介入が市場で行われて、一息ついたかに見える市場の様相が現状です。しかし、景気後退の根本にあるところの持続的需要の不足はいかんともしがたく、金融財政のその先を見た時、早晩、これ以上の景気支援策は持続性に欠けると見始める動きが市場に出てくるはずです。その際には「冬入り」となって市場は大きな調整に身構えることになりましょう。

 

さて、国際金融市場を概観した時、中でも流動性が厚く参加者が多用な為替市場の動きをとってこの3年間を概観すると次のようになります。DXY(ドル指数)の動きを用いて振り返ると、ドル高(+4.4%:2018年通年)→変わらず(+0.22%:2019年通年)→ドル安(▲3.2%:2020年通年(7月末現在))。

 

このように見た時、行って来いとなっているのが2017年末から現在に至る動きとなります。ただし、トランプ大統領が誕生した2016年末(102.21)からの動きでいえば、ドル安としての動きが特徴となります。ちなみに、今年7月末の値が93.35ででした。

 

一旦2018年初頭に90まで割るところまで急落したドル指数は、相対的にドル金利の正常化が行われてきたことを事由として、コロナショックが生起する2月下旬までは反転としてのドル高推移、結局102まで堅調に安定回復していたわけです。ところが、2月下旬に北伊発コロナショックが生起すると一転して乱高下、7月末現在に至るまでドル安で帰結しています。

 

コロナショックへの対応策としての政府介入が大規模化、国際協調化するにしたがって、ドル安トレンドが明瞭になってきた結果のドル安といえましょう。

 

筆者は、2020年の想定については従来のドル安の想定を堅持することとなります。そのドライバーは変わらず、ビハインドザカーブ(インフレ期待の醸成を優先した中央銀行の金融緩和姿勢堅持)と相まって、2020年以降の中長期的見通しについても米財政悪化を事由にドル安と置きます。

 

全米パンデミックに伴う一大有事を抑制することがトランプ政権の主眼となっている今年は、言うに及ばず米大統領選の年でもあり、ドル高が起きる金利の正常化やドル高が引き起こす新興国バブルの崩壊など、アメリカの株式市場を荒立てるような金融政策は決してトランプ大統領が好まないものであり、圧力を受ける中央銀行としてのFRBもこれらドル高に連なる方策を採らないとみています。加えて、財政の大盤振る舞いへの期待形成は、二大政党の双方から選挙活動を通じて醸成されるものと考えるのであればなおさらドル安を見ることになります。

 

短期的にはリスクオンに伴うキャリートレード復活などをドル安傾向の背景に置くものの、中長期的には、上述の米財政悪化シナリオをベースとした形でのドル安の進展を市場ドライバーとして考えています。

 

アメリカが予定している総額2.8兆ドルにものぼる大規模財政出動に、民主党案が議会を通過するならば、更なる3兆ドル(共和党の主張の場合は1.2兆ドル)に及ぶ補正予算の追加を視野に入れた時、米債券金利が上昇するいわゆる「悪い金利上昇」が避けられないものとみているためです。

 

この際、「スタグフレーション(物価上昇と景気後退の併存状況)」懸念を市場が抱く局面はいずれ避けられないとみており、相場の持続的な回復については疑問符をつけることになります。

 

従って、ドル安が継続するものの、秋から冬にかけては、リスクオン下のドル安から、リスクオフ下でのドル安へと為替動向は動きを見せつつ、国際金融市場の方ではブル相場からベア相場へと転換する事態をイメージしています。

 

無論、世界が激動する中では、米大統領選の当てつけで中国がスケープゴートとなるケースの多発や、実際「鬼(米軍)の居ぬ間の洗濯」を目論む中国によって、地政学リスクが上昇する可能性もあるわけですが、そうした事象に伴う「有事のドル買い」については、事変を起こす・起こされる当事者がアメリカである以上、そのドルを忌諱する動き(財政の大盤振る舞いをより重要視)を想定します。

 

Tadashi Tsukaguchi Official MAIL MAGAZINE