2016年8月8日

再生可能エネルギーの嘘

今流行りの再生可能エネルギー投資には気をつけたほうが良さそうです。

 

原油の価格が1バレル40ドルを割ってきている背景が長期化していく可能性があるためです。というのはシェール革命下のアメリカでの原油採掘コストが極めて低廉になってきているからです。不断の生産性向上に向けての技術開発でシェール採掘コストが1バレル50ドル前後だと言われてきたのが1バレル40ドルに落ちてきています。原油価格が上がればシェール油井採掘を再開しそうでなければ休止する、その間に生産性を上げる努力をしていく。そうした極めて機動的な油井の運営が可能になってきています。このことは2重の意味で現在各国が力を入れている再生可能エネルギーの開発に影を投げかけるものとなってきています。

 

国際原油市場では先月まで1バレル50ドルを目指してじり高になっていた原油相場が今年7月に入り腰折れし、米国株が持ち直すのを尻目に、原油相場はじり安となっています。その主因は生産面、特に米国の生産面にありそうです。

米国の原油生産動向を見ていくと原油掘削装置(リグ)の稼働数がわずかながら増加に転じ始めています。また、生産性という面ではどうもこの2年間で倍になっている様相があります。今や米国では原油生産の5割をシェールオイルが占め、しかも10年代に入ってからというもの、増産の大半がシェールオイルによるものとなり、主要生産拠点で油井当たりの生産量が飛躍的に増加し、開発に際しての採算コストが大幅に低下しているのです。この結果、原油の価格が1バレル40ドルを割ってきている背景が長期化していく可能性があります。

 

環境に比較的優しい既存エネルギー

 

この結果、2重の意味で現在各国が力を入れている再生可能エネルギーの開発に影を投げかけるものとなってきています。1つの理由は、上記の既存エネルギーが有する高い生産性がより高くなるということと、もう1つの理由は、既存エネルギーの埋蔵量の上昇です。

特に1つ目の理由については重要です。もともと既存エネルギーは再生可能エネルギーに比べて格段に生産性に比較優位を有しているのです。言い換えれば、太陽光発電や風力発電に代表される、所謂、再生可能エネルギーは地球環境の保全という観点からは全くナンセンスであるということは頭に入れておく必要があります。なぜならば、従来の石油火力発電に比べて、熱変換効率においては遥かに再生可能エネルギーは比較劣位にあるためです。

再生可能エネルギーに関しては、確かに二酸化炭素削減には効果があるものの、その他では生態系破壊がもたらされることが自明の商品です。かって、薪炭利用のための森林伐採で砂漠化が進展していたのが17〜18世紀の日本の姿です。産業革命をもたらしてた化石燃料の利用がこうした生態系破壊による国土崩壊の瀬戸際にあった世界を救うことになったことは幕末の禿山が広がる古写真と今の青々とした日本の国土を比較して見れば一目瞭然です。

18世紀の英国で人類史上初めて大量の石炭を利用することでエネルギー源自体の効率と供給可能量が一桁上にジャンプした結果、世界人口はそれまでの10倍にまで爆発的に拡大を遂げることとなり、寿命も2倍に伸びたのは歴史が教えていることです。薪や炭、蓄糞、水車、風車、牛馬、帆船、人力という再生可能エネルギーが主なエネルギー源だった時代から、石炭や石油や天然ガス、そして、原子力へとそのエネルギー源は変遷をたどってきました。その変遷の動機はより高い熱変換効率にありました。

光合成を利用した植物を加工した薪炭は太陽光発電と同じとも言えます。エネルギー算出/投入コストで見れば、化石燃料対比でその比較劣位にある再生可能エネルギーの立ち位置は明らかです。そして、薪炭から安価な石炭への移行で、金属製の農機具や土木器具の大量供給や上下水道や鉄道の整備や食料の増産と安定供給が可能となって、最終的には飢饉の克服につながっていきます。また、公衆衛生の改善や温暖房の普及での屋内生活の改善から寿命の延長が示現してきたわけです。

また、石炭は重量あたり体積あたりでの含有熱量(エネルギー量)が薪炭よりずっと高く埋蔵量も豊富で安価というのも魅力的でした。もっとも、石油は第2のエネルギー革命を起こし1970年代に一挙に世界でそのシェアを5割に拡大(石炭が8割から4割へ)していきました。石油は石炭に比べて、豊富、低廉、便利、清潔でエネルギー量が体積あたり石炭対比で数倍だからです。これが今では33%へ低下してきています。原子力が1970年代に拡大し5%を占めるようになったこともありますが、天然ガスが主流になっていったためでした。それは二酸化炭素排出に比較優位あったためです。現在の国内でのエネルギーシェアでは、石油33%、石炭28%、天然ガス22%、原子力5%、そしてその他12%という形となっています。

資源に乏しくエネルギーの自給自足が出来ない日本国内という特殊な環境に配慮すれば、熱効率というファクター以外で、自給自足できるもので賄えるというキーワードも生きてくるでしょうが、その代表例は、水素発電になります。

 

埋蔵量という面で比較劣位にある再生可能エネルギー

 

再生可能エネルギーが地球環境破壊を助長しているのはあまり知られていません。これは再生可能エネルギーを産む過程で多くの廃棄物が出てしまうためです。特に、太陽光パネルに使用される多結晶シリコンの生産のために必要とされる高温は、非常にエネルギー集約的で、高価な処理であり、そのうえ、廃棄物を大量に生成します。また、シリコンウエハーを切断することは、切り溝と呼ばれる廃シリコンダストを大量に作成し、材料の最大50%が空気とウエハーをすすぐために使用される空気と水の中で失われます。 この処理は、生産労働者や、清掃、設備メンテナンス業者に吸入問題を引き起こすシリコン粒子状物質を生成する可能性があります。 米国労働安全衛生局(OSHA)は周囲の粉塵濃度を低くしておくために、暴露限界を設定し、呼吸マスクの使用を推奨しています。しかし、それは呼吸マスクの使用にもかかわらず、労働者がシリコンダストに対する過度の暴露を受けたままであることが示唆されています。

 

加えて、再生可能エネルギーを産む過程では「紛争鉱物」を使用しておりその使用には限界があります。紛争地域において算出され、鉱物を購入することで現地の武装勢力の資金調達につながり、結果として当該地域の紛争に加担することが危惧される鉱物の総称を「紛争鉱物」といいますが、特に、主にコンゴで採掘される、スズ・タンタル・タングステン・金の4種の鉱物が有名で俗に「3TG」と言われています。紛争鉱物は、その採掘過程において武装勢力グループが関与しており、取引高の一部が武装勢力に流れ、結果として武装勢力が力を蓄え、掠奪や暴力を助長する要因となっているとされています。このため、紛争鉱物は、米国で2010年7月に成立した「金融規制改革法」において指定されており、金融規制改革法の成立により、米国の上場企業には、該当地域から調達した鉱物の使用状況を報告する義務が課せられています。

 

将来を俯瞰してみていくと、現在では当然と思われている、再生可能エネルギー推進という事業にも持続性があるのかどうか、今後10年、20年という長いスパンの中で生き残っていくビジネスなのかどうかが明瞭に疑わしく見えてくるのが「シミュレーション思考」の醍醐味でもあります。今、行われているアクションプランのチェックには、結果だけではなくプロセスも含めて大局観を培うことは欠かせないものとなっています。

Tadashi Tsukaguchi Official MAIL MAGAZINE